第5回「飾りじゃないのよウチナームン」2015/3/5掲載

 右も左も妖怪ブーム。例えカジマヤーのおじいによる「妖怪うぉっちんでぃぬーやが?」も「あり‼︎座敷わらしとかキジムナーが出てくる漫画よ」老若男女会話成立。

私世代は水木しげる氏の“ゲゲゲの鬼太郎”、時代の背景に姿形は七変化しながらも古典人気は根強い。流行なのか通る道なのかは知らないが子どもの影響力は無限大、それを一役買いたいのが沖縄文化継承だ。

唯一無二、ここにしかない言葉・伝統芸能・歴史は果たして何百年先にどう映るのか、ガラスケースに飾られた記憶のみにはなってほしくない。興味ある者だけが学ぶのではなく身近な物にしていく事が肝心だ。英語授業が確立されたように週一度ウチナー口講座、宿題の一部に“方言を訳せよ”があるとなお良い。


 聞けない話せない世代も家族で解き習したり大先輩の知恵を借りる事で触れ合うキッカケともなる。沖縄のことわざに“生まり島ぬ言葉忘れー国ん忘しゆん”とあるが心得たいところ。また年3回程、音楽朝会に沖縄民謡をテーマにてぃんさぐぬ花から物知り節まで歌からの教訓を身に染みこませ、卒業式には「だんじゅかりゆし」で新たな船出を祝えたなら素晴らしい。

 

 旧暦行事を意欲的に取り組むのもグンと近づく機会だ。今じゃ県外、外国人の方々の方が熱心で沖縄人より沖縄を知るご時世、私も民謡唄者ながら浅はかさを痛感する。子のうちから根を掘り出し、向き合い経験を増やす事で風化を防ぎたいと切に願う。スタンダードが難しいようなら例の妖怪アニメのように新鮮かつ斬新なアイディアで心を掴むのも良いであろう。私の夢はいつかマッシュルームカットでミンサーオシャレスーツをビートルズ並に着こなし、三線島太鼓マンドリンの王道民謡バンドを組んでみたい。


 それには古きを知る努力と新しき開拓の底力まで必要だが「面白い広がり」を見せれば古典バトンは続いていく。語り手や繋ぎ手を減らすのではなく溢れさせるのが大切なのだ。今やブランド化されたこの島だが流行り廃りではなく先人たちの残した誇れる沖縄を伝承するのが今の私たちの課題だ。 


神谷千尋(唄者)

神谷千尋「落ち穂」連載アーカイブ

2015年1月〜6月の半年間、琉球新報誌面に掲載された神谷千尋のコラムを記録します。

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