第2回「名言実行」2015/1/22掲載
2015年1月22日 琉球新報 落ち穂 掲載
「身なり彩る着飾る」オシャレは私の不可欠原動力だ。
服飾への興味は今は亡き神谷のオバアから譲り受けた。
津堅島の神谷商店は今で言う「アンマーたちの109(東京のファッションビル)」だった。四角いチリ紙やトゥーナー缶と肩を並べ店内には個性に富んだ服の列。島のカリスマスタイリストオバア&弟子の私は時々、都会の公設市場まで仕入れに出掛けた。
「○○姉ーさんにはこの柄が似合うさ~○○のおっとーはこれ着たらアカ抜けるよ」活き活きと服を選ぶ姿は未だ色褪せない。
激動の時代大家族のため一人何役と365日労働し、当時は海から採った売り物の貝を背負い歩くと、異臭がすると後ろ指さされた事もあった。そんなオバアはよく「周りに流されず真っ直ぐ歩きなさい。必ず良い事は起こるよ」と話した。
元々コンプレックスだらけの私は人目を気にし誰かと歩幅が合えば安心していたが人間、個性の塊。いつしか少しずつ好きな事、やりたい事を解放し始める。民謡歌手であれ水玉のドレスで唄い民謡に限らず音楽の幅を広げた。勿論、賛否あるがそれは意見とし受け入れるものの見た目や評価で根付く物は変わらず、自分のカラーを守っている。
琉歌の一節に「誠する人や後や何時迄ぃんよ思事ん叶てぃ千代ぬ栄(正直な人はいつまでも望みは叶い末長く栄えるであろう)」とある。
世を渡るには思いもしない試練やどうしようもなく明け暮れる日々だって多々。ただ、思い通りといかぬ日々は決して不幸せな事じゃない、千里万里の旅の上いつか未来は笑うと信じている。
オバアや琉歌を詠んだ先人の教え“人はこうして時を生きていく者”なのであろう。
今はみんな違ってみんないいの時代に恵まれた。そんな世間の片隅でも自分自身に悩む人は多い。
さぁ、少しずつ心を立て直してみよう。
自ら人生のスタイリストとなり自分プロデュースしてみるのも良い。
誰の中にも持つ宝磨きを続ければ必ず道は光放つ。
私は今日も那覇の市場で培ったオシャレ魂に火を灯し、好きな歌をうたう。
オバアの黄金言葉に背中を押されながら。
神谷千尋(唄者)
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