第1回「心に3センチの余裕を」2015/1/9掲載

2015年1月9日 琉球新報 落ち穂 掲載


真夜中ゴングがなる。夜泣きスペシャリストによる泣き声コンサート開幕。近隣への迷惑、睡魔からのイライラ。10分20分の静寂が時間を長く感じさせる。

人間版ユリカゴのように揺れ、小さな体をさすり泣きやませるのに必死な風景は“子育てあるある”であろう。でも子どもは子ども。暗がりは不安、怖い夢に怯え、体調不良に辛さを叫ぶ。

夜泣きの理由はエトセトラであれど子供が求めるのはただ一つ「温もり」だ。

母親4年目、考えのシフトチェンジを試みる。まずは大人の都合をやめてしまおう。疲れようが眠かろうが周りへの気遣いさえも。夜泣きなんて子どもの素直な自然現象。それを和らげ安心で包みこめるのは家族に与えられた役目で優しさの力。私は何せこの子の母親、夜泣きのパートナー。自分に余裕のない日には心に3センチの余裕スペースを設ける。

少しの心持ちは思いやりを生み、人も心も穏やかにする。沖縄の数々のわらべ歌も溢れんばかりの愛情ソングではないであろうか。どんな夜泣きも母の子守唄にはかなわなかった事であろう。


今のご時世に飛び込んでくる目や耳を塞ぎたくなるニュース。いつの時代も日常の中、築きあげられたはずの大切な物事の欠け、薄れに胸を痛めてしまう。


深夜の小さな心配りは誰も知らない。寝相を直し、布団を掛け、繰り返すうち朝日は昇る。

それは誰もが子供だった頃、家族からもらった温もりだった事を今こそ知る。

私達一人一人は愛情伝達人だ。

コツコツとたまった思いやりは湧き出る自然の泉となる。

一人一人の愛情が子ども達の道標となり、温かい世界へと繋がっていく。

3センチの余裕ができた日々は穏やかに物事と向き合える。夜泣きさえすんなり治まった。

子どもは大人の心をも見透かすスペシャリストであった。


ごあいさつが遅れました。

津堅島生まれ、沖縄民謡育ち、現在歌うたい兼2児の母である神谷千尋と申します。

「夢は叶う」幼少期の座右の銘を今、思い返してみる。

「近い将来、新聞コラムを書く」。夢がまた一つ叶いました。

一筆一筆心を込めて皆様に届けていきますね。半年間、宜しくお願い致します。


神谷千尋(唄者)

神谷千尋「落ち穂」連載アーカイブ

2015年1月〜6月の半年間、琉球新報誌面に掲載された神谷千尋のコラムを記録します。

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